不思議の国の女王様
 
 女王は、バラ色の唇をキュッと引き結ぶ。



「いかがなさいますか」


「茶会は開く。不審に思われてはならぬ。お前は……」


「私はシェリル様のお傍を離れません。この状況ならばなおさら」


「気取られたわけではあるまい。さしずめ、わらわの弱点探りといったところか。……情報の出所は」


「スペード騎士団長です」


「なるほど、先の失態の埋め合わせか。白々しい」


「アリスのことはよいのですか?」


「あやつが傍におる。百の兵にも勝るだろう。今は任せるほかあるまい」


「承知いたしました」



 女王はひとつ息を吐いて、かぐわしく香る紅茶に口をつける。


 ――これほど美味な茶は、しばらく味わえなさそうだ。
 
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