不思議の国の女王様
「その少女は、わらわが探していた者ではない。下がれ」
「陛下! しかし彼女はたしかに」
「下がれ、と命じたのだ。貴様の耳は飾りか? 次は首を刎ねる」
恭しい態度が一変、男は恐怖に震え始める。
「宮城を守る名高いスペード騎士団員が、聞いて呆れる。連れてゆけ」
抑揚のない言葉と共に、壁の一部分が離れた。
男を連れ去ったのは、同じ紋章を背負う兵士たちだ。
皮肉ではない。身内の清算は身内で行う。
あって然るべきもの。
やがて訪れた静寂に、凛とした号令が飛ぶ。
「一刻の猶予もない。本物のアリスを探し出せ」
荘厳なシャンデリアが、キィン……と共鳴した。