不思議の国の女王様
*三日月口の傍観者:チェシャネコ
目を覚ますと、深い森の景色を見上げていた。
「……何だ、ここは。どうして俺、こんなところに……」
青々と茂った木々も、色とりどりの花も、見え覚えのないもの。
「俺は、たしか……」
脇腹に手をやる。
なんと、痛みがない。
そもそもなかったのだ。
傷も、血も。
「なっ、ウソだろ……そうだ、本は!?」
急いで辺りを見回すが、新緑しか見当たらない。
焦燥感に駆られ、立ち上がろうと手をついた拍子に、何かへふれた。
恐る恐る手をのける。
本ではなかった。
落胆しながら、落ちていたものを拾い上げる。
それは、トランプだった。
といっても、何も描かれていない、真っ白なトランプ。
(奇妙な紙切れだなぁオイ……)