紅いホワイトデー
ピピ……ピピ……ピピ……


「……ん」


規則的な目覚し時計の音で目が覚める。


今日は3月14日。ホワイトデーだ。


今日、僕は志乃ちゃんに告白……する。


本当はもっと早くしたかったのだけど……。


勇気がなくて、今日まで先延ばしにしていた。


お返しのチョコは、少し高級な市販品。


いつもより早起きして、いつもは直さない寝癖を直してみる。


鏡に向かって「好きです」なんて練習していると、洗面所の扉が開く。


「伊吹?なにしてんの」


「ね、姉さん……なんでもないよ」


練習を聞かれていないかと内心ドギマギしながら平然と答えた。


それでも、姉さんは僕の違和感に気付いたらしく、意味ありげにふぅーん……と呟く。


「男は度胸!バァーンと当たって砕けな!姉さんは盛大に笑ってやるから」


それは酷いよ、姉さん。砕けることが前提じゃないか。


「……あ、ありがとう」


アハハと豪快に笑う姉さんにお礼を言うと、そそくさと洗面所から逃げ出した。


洗面所の扉を閉める間際に姉さんがボソリと呟いたのを聞いた。


「……ふぁいと!バカ伊吹」


だから、バカは余計だってば。










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