好きを百万回。
銀行の近くのパン屋さんの袋と缶コーヒーを片手に持っている。ああ、女子行員に大人気の野波さんとかいう人だ。
「どうぞ」
にっこり笑ってソファーの端に寄り、また本に視線を戻す。
亜弥が言うには、一流国立大出、ルックスも二重マル、仕事も出来るで『今ウチの銀行で一番の独身優良物件』だそうだ。
けれど容姿も能力も十人並み、取り立てて目立つところがないわたしにとっては住んでいる星が違うくらい関係ない話だ。
向こうもわたしなんかには興味ないんだろう。パンを片手に書類か何かをめくっている。
次はベッドカバーにしよう。ちょっと大変だけど出来上がったらきっと嬉しい。帰りに布屋さんに寄っていこうと決めた。仕事が終わるのが楽しみだ。