好きを百万回。
次のお客様を呼ぶボタンを押す前に目顔で合図すると、するりと窓口にやって来て、小さな折りたたまれたメモ片が音もなくカウンターに置かれ、また手を振りながら離れて行った。
『今週の金曜日、お食事をご一緒しましょう。お返事は下記メールアドレスまで。折田』
メモの最後には携帯のものと思われるメールアドレス。
忙しくしていたので気を遣ってくれたのだろう。
「やだあ、木下さんて年寄りキラー?」
呆れたような小さな声が隣の矢口さんから聞こえた。
返事をするのもバカらしくて、控え目に笑っておいた。
いつものところで、仕事が押して普段より短くなってしまった昼休みを取る。
片手で携帯電話を操作して、折田さんに『金曜日.ご一緒させてください。』とメールをする。