好きを百万回。
自分の世界に夢中で、隣の独身優良物件の存在をすっかり忘れていた。
気付いたら、
「邪魔して悪かったね」
と爽やかに立ち去る野波さんの後ろ姿。
うーん・・・・・・・・・・
わたし女子力低いかも。普通ならここは話しかけて自分を売り込んでおくところだったのかもと思いついた。
でも、まあ異星の王子様だしね。
売り込んだところでどうなるものでもないか・・・・・・・・・・。
わたしは1階の預金窓口に座っている。
たしか野波さんは法人営業部で、1階が職場のわたしと普段4階の住人の彼とは全く接点がない。
「ちょっと、木下さん」
同期で隣の窓口に座る矢口さんに呼ばれる。
「なに?」
栗色の髪をいつも綺麗な縦巻きにして、目はパッチリ。唇はツヤツヤ、グロスで光る。