好きを百万回。


最寄り駅に着いたら電話しろよと言われていたので、地下鉄の階段を登ったところで連絡を入れた。

マンションが見えるところまで歩いて行くと、野波さんがエントランスの前で待っていてくれている。

長身のすっきりとした体格、シャンとした立ち姿。


本当に彼がわたしの恋人なのだろうか。


「こまり!」

わたしに気付いた彼が顔を綻ばせる。

「すごい荷物やな」
そう言いながらわたしからバッグを取り上げた。

「重いから自分で持ちますよ」

「アホやな、重いからオレが持つんやろ」
エントランスのオートロックを開けて先をスタスタと歩いて行く野波さんを追いかける。

10階の野波さんの部屋の玄関に入り、わたしの背後でドアが閉まる音を聞くのと同時に野波さんが触れるだけのキスをした。
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