好きを百万回。
「・・・・・野波さん」
唇が少し離れた気配を感じて目を開けると野波さんの綺麗な瞳に映る自分の姿が見える。
「いらっしゃい、こまり」
バッグを持ってない方の手がわたしの頭を撫でた。
いつかキスにもこの甘さにも慣れるのだろうか、全く想像がつかない。廊下を先に歩く野波さんの背中を見ながらそんなことを考える。
「こまり?どした、ぼーっとして」
廊下の先、リビングのドアを開けながら野波さんが聞く。
「あっ、一人暮らしにしてはマンション広いなあって思って」
「ああ、このマンション元々は家族で住んでたから。両親がドイツに転勤で行って姉さんが京都に嫁に行って、結果的にオレ1人が残っただけや」
「だから広いんですね・・・・」
「そう。無駄に広くて掃除も面倒なんだけどさ」