好きを百万回。
野波さんがわたしの荷物をリビングの続きのキッチンに置いてくれた。
「キッチン、好きに使ってええよ。って言ってもオレは殆ど料理しないから何にもないけど」
「あらかたウチで作ってきたから大丈夫ですよ。お皿さえあったらいいです」
「食器は結構あるよ。母親が食器集めるのが好きで置いてるから」
「じゃ、用意しますね。ちょっと早めの夕食ってことで」
使い易そうなシステムキッチンに持ってきた料理を出していく。冷蔵庫を開けると、中はドレッシングとビールとミネラルウォーターとバターくらいしか入っていない。料理はしないというのは本当らしい。
お皿に料理を盛り付けながら、ふとリビングに目をやると野波さんがソファーを背もたれにして床に座り辞書を片手に英語の本を読んでいた。時々ペンがサラサラと動き、何かを書きこんでいる。