好きを百万回。
弁当を食べた後はキルトの本を開いて読み耽っているか、一心不乱に針を動かしているか。
まるでオレなんかいないみたいに。
はっきり言って目が覚めるような美人ではない。少し口角を上げて、楽しそうに1人で針を進める女の子。その柔らかで穏やかな雰囲気は何も言葉を交わさないのに妙に居心地が良かった。
ボタンが転がったのはラッキーな偶然。
オレの手を傷つけないように慎重に、1針1針緊張して縫う彼女の顔をじっと見つめる。
丸い瞳、あまり高くない鼻。
ああ、なんだ美人ではないけれど愛嬌があって可愛い。
木下こまりーーーーーそれが彼女の名前。
「嫁さんにしたい女子行員ナンバー1?」
同期の男ばっかりの飲み会で、思いがけない話しを聞いた。