好きを百万回。
そこに思い至ってスッと背中が冷えた。
「噂になってる」
「あ、やっばり」
更衣室で着替えていると、亜弥が飲みに行こうと誘ってきた。後から山岸くんも合流した。亜弥とよく行く居酒屋の個室で話を切り出される。
「そんなに大々的に広まってるわけやないけどね」
「想像つくなあ・・・・・『あんな地味なコがなんで野波さんと』って?」
自分で言って軽く傷つく。
「男子行員の間ではあんまり噂は聞かないですよ。知ったら泣くヤツ結構いると思うけど」
「こまり、あんた嫌がらせされてるんとちがう?」
「うーん・・・・・大したことやないよ」
「けど木下さん、書類捨てられたでしょ?大したことやとオレ思うけど」
「うん、でも本気の嫌がらせやったら丸めて捨てるんやなくてシュレッダーかけると思うんだよね」