好きを百万回。
ノックの音がして、看護師さんが顔を出した。
「木下さんのお身内の方、先生がお話しますからお越しいただけますか?」
「先生にはわたしが付いてますから行って来てください」
小谷さんの申し出に有難く甘える。
30をいくつか過ぎたくらいの穏やかな口調のお医者さんだった。
彼の口から語られる内容は、わたしを打ちのめし、奈落へ落とす。
叫びだしそうになるのをかろうじて堪える。
朔也さん、朔也さん、朔也さん・・・・・!
そばにいて。
そばにいて抱きしめていて。
もう心が悲しみでいっぱいで、許容量を越えて溢れ出してしまった。
フラフラと病室へ戻る途中、何度もスマホを出してかけようとする。
一言だけ声が聞きたい。
あの優しい声で名前を呼んで欲しい。
なのに指が動いてくれない。
気持ちにブレーキがかかる。