好きを百万回。


「・・・・・最近、アンタ時々すごく疲れた顔するけど野波さんの他にも何かあった?」

亜弥は鋭い。

「何でもないよ。多分、夜遅くまでキルトに夢中になってるから」

「野波さんのお姉さんのとこ、まだ行ってるの?」

「うん。やめようと思ってたんだけど弟のこととわたしは関係あらへんから続けて来なさいって」

「そう、良かったやない」

「うん」

キルトが今のわたしのギリギリの心の均衡を保ってくれている。お母さんのこと、野波さんのこと、キルトをしているときだけ忘れていられた。

お昼から仕事に戻ると、矢口さんに声をかけた。

「お先でした」

チラッとこっちを見て自分の席を片付けている。小さく溜息を一つつき、席に着いた。

隣で立ち上がる気配がしてわたしの後ろを通るとき、矢口さんがわたしの方に身体を傾けた。

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