好きを百万回。
「今週末、野波さんのアメリカ行きのお祝い会をウチでするのよ。わたしと母でお料理頑張るの」
「・・・・・そう」
「家庭的なとこもアピールしないとね」
耳元でクスリと笑い、今日も綺麗に巻かれた栗色の髪を揺らして歩いていく。
言われたようにもう別れたんだからほっといてくれたらいいのに・・・・・
日が経つごとに辛さや切なさは薄れていくと思っていた。
時間が心を少しずつ癒してくれると思っていた。
そうじゃないことを思い知らされる。
毎晩、少し慣れたわたしよりちょっぴり高い体温を思い出す。
毎朝、わたしの名前を呼ぶ低くて甘い声を思い出す。
忘れるどころか日々鮮やかに思い出す。
どんなに野波さんを心から追い出そうとしてもできない。
毎朝決まった時間に起きて仕事に行き、家に帰る・・・・・そんな日常をやっとの思いでこなしていた。