好きを百万回。


「ふうん」
矢口さんにそんな優しいところがあったなんて初めて知った。

「ホントに彼女なのかしらね、木下さん」
後ろで伝票を揃える森崎さんが呟く。

そう言えば、わたしも今日おじいちゃんのお相手したなと思いついた。野波さんと話す矢口さんはわたしなんかには絶対見せてくれない溢れるような笑顔。

まあ、いいか。わたしがお相手したおじいちゃんは野波さんがいうご隠居さんではないのだろう。

「木下さん、これどこに置きますか?」
いけない、山岸くんに荷物もたせっ放し!

「ゴメン!とりあえず私の席の下に置いて。ありがとね」

「了解です」

山岸くんが荷物を置きやすいように、椅子を引き出してカウンターの下をあける。

「山岸くん、ここにーーーー」

「うわっ!」

振り向いた拍子に荷物を持った山岸くんにぶつかった。箱が落ちて中身が床に散らばる。慌てて2人で床に座り込んで拾おうとした。

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