好きを百万回。


「今度の親睦会、野波さんの送別会と壮行会兼ねてるんやけど、木下さん来ないわよね?」

始業前、矢口さんがわたしに話しかける。制服が半袖になり、野波さんが銀行に来るのはあと少し。

「うん、行かない」

「何か伝言あれば聞くわよ?」

「何にもない」

「ふうん、冷たいの」

何にも言える訳ないのに・・・・・。

「あ、8月5日に出発やって。わたし有休取って空港にお見送り行くから仕事、よろしくね」

頑張って。

本当は伝えたいけれど、伝えられない。

「木下さん!」

森崎さんに呼ばれた。

「はい」

「今日は窓口そんなに忙しくなさそうだし、新人さんを座らせてみるからあなた書庫の整理してきてくれる?」

「はい」

「新しい伝票とか用紙とか届いたのがダンボールに入って入口に積み上げてあるわ」
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