好きを百万回。
「怪我ないか?」
声が出ない。
振り向くこともできない。
脚立から落ちたわたしは、野波さんの上に落ちたみたいで床の上で彼に後ろから抱えこまれていた。
「・・・・・す、すいません。すぐにどきます・・・・・」
一瞬、野波さんの腕に力が入り、抱きしめられる。
何ヶ月ぶりかの、大好きだった腕の中。
胸が締め付けられる。
ふっと拘束される力が緩み、腕を取られ立ち上がらされた。
「の、野波さん、怪我はーー?」
「ん?オレは平気」
スーツについた埃を軽くパンパンと叩きながら野波さんが答える。
「良かった・・・・・今怪我なんかさせてしまったらどうしようかと・・・・・」
「木下」
ああ、もう「こまり」と呼ばれないんだ今更ながら思う。