好きを百万回。
17


名前が「木下こまり」から「佐藤こまり」になった。


両親が離婚した。

「実家のお墓に入りたいし」
それがお母さんの理由だった。


「こまりはどうせ結婚したら姓が変わるんやからそのままでいたらええのに」
と父母ともに言ったけれど、お母さんと同じでいたかった。

銀行ではそのまま通称として「木下」を使っていた。森崎さんに相談すると「転勤でもするときに変えたらええわよ、ややこしいし」と言われたから。



野波さんが日本を発ってから数日後、お母さんも旅立った。


病院で葬儀屋を紹介されて、色々説明されるけれどちっとも頭に入ってこない。


お父さんに連絡して、銀行に連絡して・・・・・やらなければならないことは思い浮かぶのに身体が動かない。


突然頭をクシャクシャとかき混ぜられた。


「・・・・・?」


「小娘、大丈夫か?」


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