好きを百万回。


お母さんの葬儀を終えてからが本当は大変だった。

相続のこと、お母さんの仕事のこと、それらのことで銀行の休みの日は潰れた。

生命保険や貯金でわりと纏まったお金を残してくれていたし、自宅マンションもあり自分の仕事もあるから生活に困ることはなさそうだ。


四十九日も終えて、やっと一息つけた。


やることがなくなり、時間ができると同時に寂しさが押し寄せてくる。

だからといって折角週末になっても、遊びに出掛けようという気持ちにはなれず、やはりキルトをして過ごす。

今週末もそうやって過ごそうと、銀行を後にした。

駅に向かおうと歩いていると、両脇から腕をホールドされた。

「山岸くん!?」

「木下さーん、お出掛けしますよ」

「こまりー、一緒に楽しい週末しよー」

「亜弥!?」

そのまま2人に引き摺られるように大通りまで歩く。


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