好きを百万回。
足を止めたその先に黒い乗用車。
車に疎いわたしでも高級車だということがわかる。
後部座席のドアを開けて、亜弥がわたしの身体を押し込み自分も乗り込む。
山岸くんは助手席におさまった。
「運転手さん、やってちょうだい」
鷹揚に亜弥が言い放つ。
「誰が運転手やっ!」
結弦さんが音もなく車を発進させた。
わたしは状況が理解できない。
「腹黒専務さんが温泉ご招待してくれるって。ま、山岸の家やけど」
「腹黒言うな」
「お友達価格でええ部屋あけてもろたんで期待しててくださいね」
「わたしなんの準備もーーー」
「大丈夫。わたしがパンツに至るまで用意したげたから」
「亜弥っ!」
なんで温泉?
なんでこのメンバー?
聞きたいことはいくつもあるのに、どこか楽しげな3人の様子に水を差しそうで何も聞けなかった。