好きを百万回。
結弦さんの運転は上手で、車の性能のせいもあるのか振動も少なく、込み合う高速道路をすいすいと軽く運転していく。
野波さんも上手だったな・・・・・
京都のわたしの家までのドライブが楽しかった。信号で止まるたび、右側から伸びてきた手が悪戯にわたしの髪や顔、太腿を撫でる。
渋滞にかかるとキスをされ、前の車が動き始めたことに気付かず後ろの車にクラクションを鳴らされたこともあったっけ。
幸せな記憶。
もう二度と還ってこない日々。
「小娘、大丈夫か?酔った?」
話しかけられても上の空だったわたしを結弦さんが気遣う。
「あ、大丈夫ですよ。結弦さん、運転上手やし」
「ほんならええけど。もうすぐ着くで」
温泉街のいちばん奥に山岸くんの家の旅館があった。
車を降りて、息をのむ。