好きを百万回。


「なあんも考えんと寝れるで」

「うん・・・・・」

久しぶりにちゃんと楽しく食事をしたような気がした。

いつも砂を噛むような味気ない食事だった。

お酒のせいか、だんだんと瞼が重くなる。
「こまり、寝るならお布団ひいてもらおうーーー」

「うん・・・・・」

亜弥の声が遠くに聞こえた。




お布団が気持ちいい。
身体が温かいものに包まれて安心する。

「こまり」

誰かが呼ぶ声が聞こえる。

ああ、夢を見てる。

ここにいるはずのない、愛しい人の声。

「朔也さん・・・・・」

温もりに擦り寄る。
夢の中でしか会えない人。

いつもなら名前を呼んだところで目が覚めて、無くした温もりが恋しくて泣いてしまう。

なのに今日は名前を呼んでも目が覚めない。
身体の輪郭をなぞるように撫でられて、額に口づけられる。

神様からのご褒美なのかな・・・・・。
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