好きを百万回。
徐々に元気を取り戻す。
食事も睡眠もきちんととって、体重も少しずつ以前のものに近付いた。
時々彼を思い出して心が軋むけれど、無理に忘れようとすることを止めた。
だって消えてくれないから。
仕事も誠実にこなせていると思う。
野波さんと別れてからグダグダな情けない女になったと周りに思われないように。
野波さんがあんな女の子と一時でも付き合っていたなんてと笑われないように。
変化と言えば、矢口さんが転勤になった。自宅から片道2時間はかかる、田舎のショッピングモールの中の出張所に。
辞令が出たときには課長や森崎さんにくってかかって大騒ぎだったけれど、常務の意向だと聞くと途端におとなしくなった。
合コンで取引先の社員を怒らせたとか、虐めていた後輩が実は取引先の社長の娘だったとかまことしやかに囁かれていた。
そのうちわたしも京都支店に転勤になり、真相は分からなかった。