好きを百万回。
18
「佐藤さん、融資課の新藤さんが野波さんに振られはったって」
お昼休みの食堂で後輩の女の子が興奮した口調で言う。
「そんなん黙っといてあげなあかんよ」
やんわり叱った。
銀行の昼休憩は2交代で1週おきに早番と遅番が入れ替わる。内勤は女の子が多いこともあり、食事をしながら噂話にも花が咲く。
「そういう佐藤さんかて、また支店長が持ってきた見合い話断ったって?」
年輩のパートさんの言葉に飲んでいたペットボトルのお茶を噴きそうになった。
「なっなんでその話・・・・・っ!」
「支店長に『また佐藤ちゃんに見合い話断られた。あの子は付き合っている男がいるのか』って聞かれたから」
支店長、口が軽い・・・・・っていうか個人情報保護法とか知らないのか・・・・・。
「付き合ってる人はいないけど、結婚する気にもなれへんの。ほら、もうすぐ留学するし」