好きを百万回。
京都支店に転勤してくるなんて・・・・・。
帰国したら国際部とか、本店のどこかに行くものだとばかり思っていた。
亜弥の話だと、京都の南の方に今度外資の大手製薬会社が研究所を作るらしく、その融資関係の交渉をするために呼ばれたらしい。
そのせいか、支店長や融資課長とよく外出している。
毎日一度は遠目にでもその姿を目にする。
苦しさと嬉しさの綯交ぜになった複雑な感情が心に湧く。
結局、2年経とうが3年経とうが、忘れることなんてできないことを改めて思い知った。
食堂のある2階から階段を駆け下りる。
営業室のドアを開けるため、ノブを回し押そうとすると反対側から引っ張られ、その拍子に身体が大きく傾いた。
「あっーー!」
誰かが転びそうになるわたしの身体を胸で受け止めてくれた。