好きを百万回。


野波さんが結婚・・・・・。

いつかそんな日が来ることなんて分かっていた。

余計なことを考えないように、書類に集中する。

自分から手放した幸せを、今更嘆く資格も権利もない。

あと1ヵ月と少し、その間だけ胸の痛みを我慢したらもう二度と会うこともないし、好きなだけ泣こうーーー。

「泣くなら一晩中抱いててあげますけど?」

「志田くんごときが百万年早い」

「ひでぇ。これでも人気あるのに」

「年上をからかってないで仕事しなさい、仕事」

チェックが終わった書類を持って課長の検印をもらいに立ち上がり、志田くんとの話を切り上げた。


「こまりちゃん、僕にもコーヒー頂戴」
窓口を閉めて、集計もほぼ終わったところで給湯室でコーヒーを入れていたら取引先課の大崎さんに声をかけられた。

「お疲れ様です。汗びっしょりですね。アイスコーヒーにしますか?」




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