好きを百万回。
ぶんぶんと首を横にふる。
「違います。これは褒めて貰って嬉し涙っていうか・・・・・」
疑っているのか眉間の皺が取れない。
野波さんが大きく息を吐いた。
「・・・・・男の前であんまり簡単に泣き顔を見せるな」
「あ、はい・・・・・」
野波さんが立ち去ろうと向きをかえる。
「野波さん!」
呼び止められて驚いた顔をする。
「わ、わたし、強くなったから!ちゃんと独りで生きていけるようになったから!留学だってするし、銀行を辞めてもきちんとした生活送るし大丈夫」
「・・・・・ああ」
「だからっ・・・・・だから心配しないで。わたしのことなんて気にしないで幸せになってください。結婚決まったって聞いだから・・・・・だから・・・・・」
「・・・・・分かったから」
野波さんの手が伸びてきて少し乱暴に頭を撫でる。
長い指、骨ばった大きな手。