好きを百万回。
ビニールの口をしっかり閉じて、おしぼりをトイレの手洗いで軽くすすぐ。
「山岸くん、廊下に座りこんでると冷えちゃうし、とりあえず立って」
腕をとって立たせようとする。男性にしては小柄だと思っていたけれど、人間一人は流石に重い。足元が覚束無い山岸くんを支えきれず、抱きしめるような形で尻餅をついた。
大きな声を出して助けを呼ぶか・・・・・。
「もー・・・・・!ケーキセットじゃ割に合わへんし・・・・・」
「たしかにね。ケーキセットひとつで木下に抱きしめてもらえるならみんな喜んでおごってくれると思うけど」
いつの間にかやって来た野波さんが山岸くんの腕を取り、肩を貸して立たせる。
「山岸とオレとキミの荷物、悪いけど持ってきて」
「はい」
座敷に戻り、手近な人に事情を説明して荷物を持って野波さんのところに戻る。