好きを百万回。


外に出るとタクシーが待っていた。野波さんが店員さんに頼んで呼んでおいてくれたらしい。山岸くんを乗せて、野波さんが運転手さんに宝塚の住所を言う。ドアが閉められ、タクシーが走り去る。

「野波さん!宝塚までっていくらかかるんですか!?山岸くん、大丈夫?」

「心配ない。山岸の家は有馬の老舗旅館やから金持ちだよ。本人もそれでいいって言ってたし」
わたしの手から自分のコートと鞄を受け取る。わたしも自分のコートを羽織る。11月の夜風は意外と冷える。

「木下、ストールしてなかったか?」

「あ、さっき山岸くんが吐くのを受け止めちゃって捨てちゃいました」

「お人好し」

野波さんが鞄からグレイのマフラーを出して、わたしの首にぐるっと巻き付ける。
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