好きを百万回。
「朔也<さくや>だよ。萩原朔太郎の朔になり」
「あ、はい」
「覚えた?」
野波さんが顔をのぞき込む。
「お・・・・・覚えました!」
「よろしい」
子供を褒めるように頭をくしゃくしゃと撫でられた。
「さて、帰るか」
「あ、お疲れ様でした」
慌てて頭を下げる。頭を上げると野波さんが手を差し出していた。
「?」
「またこけるとイヤだから手。駅まで送る」
「だ・・・・・大丈夫ですよ!子供やあるまいし!」
どれだけドン臭いと思われてるんだ、わたし。焦ってお断りする。
「うるさいよ」
野波さんの右手がわたしの左手を掴む。
わたしの顔に一気に熱が上がった。
「の・・・・・野波さん・・・・・!」
「ぶっ・・・・・木下、真っ赤」