好きを百万回。
ナスとベーコンのトマトソースのパスタが運ばれてきて、機械的に口に運ぶけれど、味わうような余裕がない。目の前では悠然と食べる人。
「木下」
「は、はい!?」
テーブルの向こうから手が伸びてくる。
ナプキンが頬を撫でる。
「トマトソースがとんでた」
・・・・・・・・・・恋人がいたこともなければ、父親以外の男性とこうして2人っきりで食事をしたこともないわたしには、野波さんとのこの時間がどんな意味があるのか分からない。
食後のコーヒーまで飲んで、席を立つ。
「野波さん、お会計わたしが・・・・・」
慌てて財布を出すわたしの手を野波さんが押さえる。
「年下の女の子に奢られるわけにいかへんでしょ。また今度なんかで返して」