好きを百万回。
「まあ時間くれてんだし、少し考えてみればいいと思うんだけどーーー」
亜弥が言葉を切る。
「なに?」
「向こうはパーフェクトな王子様やけど、こまりかて人気物件(処女)で引く手あまたなんやからね。気後れするのも遠慮するのもなしやで」
「わかった・・・・・」
さすが。
亜弥はわたしの悩みのひとつを的確に言い当てる。わたしごときが野波さんの横にいてもいいのだろうか、それがいちばん気に掛かっていたから。
野波さんに返事をしないまま、時間が過ぎていく。月末月初の忙しさが終わって、もういい加減答えを出さなければと思う。
好きか嫌いかと聞かれたら『好き』。野波さんのことを考えると、胸の奥をキュッと掴まれるような気持ちになる。