好きを百万回。


様子を聞きたくても、野波さんのメールアドレスも電話番号も知らないことに気付く。



わたし、何も知らない・・・・・・・・・・。




銀行を出て、意を決して電話をかける。


住所を教えてもらい、地下鉄を乗り継いで野波さんのマンションの最寄駅まで行く。スマホで地図アプリを開いて、歩き始める。徒歩5分くらいと教えられたからそんなに遠くないはずだ。

あのマンションかな、と見当がついたところで、少し先にタクシーが止まったのが目に入った。

降りてきた人を見て、思わず物陰に隠れてしまった。

デパートの紙袋を持った矢口さんだ。

迷いもなくマンションのエントランスへ向かって行く。


急に水から引き上げられたような気持ちになる。
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