好きを百万回。


どのくらい座っていたんだろう。
気がつけばすっかり身体が冷えていた。
もう矢口さんは帰っただろうか。

「帰ろ・・・・・」

良く見れば街灯はあるものの、充分な明るさではない。そんなことにも気付かないでぼんやりしていたなんて・・・・・。


「木下っ!!」


名前を呼ばれて驚いて振り返る。


「野波さん・・・・・」

ダウンコートを着て息を切らせた野波さんがいた。

「野波さん、体の調子は?」

彼が白い息を吐きながらわたしを見る。


「バカッ!こんな暗いところで何してるっ!!」

いつも優しい穏やかな野波さんがわたしを怒鳴り、着ていたダウンコートを脱いでわたしをくるむ。腰に手を回され、そのまま歩くように促された。


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