好きを百万回。
野波さんの両手がわたしの頬を包み込んで、目を合わせて彼が表情を和らげる。
「・・・・・一生懸命考えてたんやな。真面目な木下らしい」
至近距離で見つめ合うことが急に恥ずかしくなって下を向こうとするけれど、野波さんの優しい手が許してくれない。
額にキスが落ちてくる。
涙でぐしょぐしょの頬にも。
「好きだ」
野波さんが耳元で囁く言葉がわたしを酔わせる。後から後から涙が溢れて、伝えたい言葉がうまく紡げない。
ほんの数秒唇が重ねられた。
「こまり」
父親以外の男性から初めて呼ばれるわたしの名前。思わず泣き笑いになる。
「ん?」
「・・・・・お父さん以外で初めて、男の人に名前呼ばれたの・・・・・」