好きを百万回。
3
出会いは必然と偶然。
入行して2年目だった。
「こまりー、お昼どうすんの?」
「んー、いつものとこで食べるし気にせず行って」
声をかけてくれた同期の亜弥に返事をする。
3階のL字型に曲がった廊下の突き当たり、倉庫の横に誰が持ち込んだのか、昔ロビーで使われてたと思われる古ぼけたソファーがある。
2畳ほどのスペースでちょうど廊下からも死角になり、窓からは暖かい日差しが入る。わたしのお気に入りスペースだ。
お弁当を広げ、キルトの本に夢中になる。次は何を作ろうか考えるだけでワクワクする。
ふいに本に影がさした。
「?」
不思議に思い、顔をあげる。
「隣、いい?」
立っていたのは背の高い男の人。
紺のスーツ、フレームレスのメガネ、きちんと整髪料でまとめられた短い髪。