好きを百万回。


「ふうん・・・・・」

「ん?」

「何でもない。いっぱい食べといで」

少し考えこむような素振りの亜弥に若干の不安を感じながら、午後の業務に戻った。



山岸くんと約束の日、隣の窓口で終始ご機嫌な矢口さんのお陰かどうか、何事もなくスムーズに仕事が終わり、終業とともに矢口さんが風のように消えた。

「矢口さんの今日の合コンの相手、相当の好条件なんやないの?」
まとめた伝票に確認印を貰うために森崎さんのデスクに行くと、わたしにあきれ果てたように呟く。

「なんかお医者さんみたいですよ」

「はー、それは力が入るわね」

「わたし初対面の人と話すのってかなりエネルギー使うんですけど彼女はそうやないんですね」

「彼女の場合、ある種才能だわ。お父さんの関係でお見合い話もかなりあるらしいけどね」
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