夢追う私たち
「ぁ…浅田さんっっ!!」

「てめぇっ!!」

浅田さんが凄い勢いでこっちに走ってくる。
男は、浅田さんの存在に気づいていなかったらしく、
慌てて私を放って逃げ始めた。

「待てコラッ!!」

伊達に鍛えてないらしい。
浅田さんと男の距離があっという間になくなってしまった。

男の腕を掴んだかと思うと、腕を引っ張り相手を引き付け、足をかけ…

「うらぁっ!!!!」

ダンッ

は?

背負い投げ?!

男は宙に舞い、地面に叩きつけられてしまった。

と、同時にサイレンが響き渡る。
少ししてから老夫婦が大きな一軒家からでてきた。

「大丈夫ですか?!」

奥さんが私の側に駆け寄る。
綺麗な白髪で目尻が下がり、とっても優しそうな顔をしている。

旦那さんも、浅田さんの方に歩み寄った。
どうやら旦那さんは、足が悪いみたい。

「警察には通報したので、もう大丈夫ですよ!!
それにしても…お見事!!
年寄りの私には、何もできんかった…すまないね…。」

男の上に乗りながら、浅田さんが答える。

「いえ、通報ありがとうございます。助かりました。
それより…倉持ィ、大丈……夫なわけねぇよな…」

と、顔を歪めながらケータイを取り出す。

どこかに電話してるようだ。

多分、私の顔は涙やら鼻水やらでグチャグチャだと思う…。
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