夢追う私たち
帰り支度中にそういえば…と助けに来てくれた老夫婦のことを思い出し、隣で着替えてる美雨さんに声をかける。

「あの、この間通報してくれた老夫婦に何かお礼をしたいんですけど、何がいいと思います?うちの食事券渡そうかと思ったんですけど、旦那さん足がよくなさそうで…」

あんまり無理強いするのは良くないと思ったのだ。

んー、なら…とコートに袖を通しながら素敵な提案をしてくれた。

「うちの店特製のドレッシングと、菜耶ちゃんの手作りのお菓子…パウンドケーキとか日持ちするやつとか!!
なっちゃんにおいしいやつ教えてもらってさぁ♪」

ここでハッとする。

今日のお昼…余裕なくてカフェに挨拶しにいけなかったんだ…
最っ低ーっ…まだいるだろうか…

「あ…ありがとうございます、美雨さんっ!!
あたし、ちょっといってきます!!」

「は?えっ、ちょっと?!菜耶ちゃん?!」


今、動けるMAXのスピードで、とりあえずカフェに向かう。
浅田さんは居残りしてるだろうから、マスターはいるはず。

夏希さんも一緒にいたりしないかなぁ…

ロールカーテンの隙間から、ほんのり淡いオレンジ色の光が漏れている。
鍵がしまってるので、とりあえずガラス扉をノックしてみる。
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