夢追う私たち
《コンコンコン…》
聞こえるかなぁ…
ちょっとすると、ロールカーテン越しに人影があらわれた。
チラッと顔を覗かせたのは、大きく目を見開いた浅田さんだった。思いもよらぬ来訪者でビックリしたのだろう。
あわてて、鍵をあけてくれた。
「わりぃ、もう終わった?時計みてなかった…」
「え、違う…いや違わないけど、あのっ、あたし今日カフェ行けなくてマスター達にお礼いってなかったから…」
「あぁっ、中入れよ。まだ夏希さんもいる。」
中に入ると、コーヒーを淹れてるところだったのか、すごくいい香りがした。
「菜耶ちゃん!!もう平気なの?!」
私に気づいたマスターが、こちらに駆け寄る。
「遅くにすみません、まだ自由には動けないですけどちょっとは良くなりました。ご心配おかけしました!
あと、コーヒー温かくてすっごく美味しかったです。」
厨房から夏希さんを連れて、浅田さんが戻ってきた。
「菜耶ちゃんっ…!!」
「夏希さんっ、ケーキめちゃめちゃおいしかったです!
ほんとに、ありがとうございました!!
あの…それで、お願いがあって…」
老夫婦が助けを呼んでくれたこと、
お礼をあげたいこと…
抹茶と大納言を使用したパウンドケーキを作りたいこと…
指導をお願いしたいこと。
これらを話すといいねぇーと言って快く了承してくれた。
早く終わる土曜日に、昼休みに下準備、終わってから仕込みをすることになった。
それなら日曜日に渡しに行ける。
そこまで話終えると、いつの間にか着替えにいっていた浅田さんが現れた。
「じゃぁ、土曜日よろしくおねがいします。
遅くにすみませんでした。お疲れ様でした!!」
「お疲れ様、お大事にね。」
夏希さんとマスターが手を振りながら送り出してくれた。