夢追う私たち
ガンっ
「いってぇぇぇっ、てめぇーっ……」
ヤツの脛に蹴りをいれてやった。
「てめぇじゃないです!!倉持です!!
まぁ、そんなんどうだっていいんですけどっ、恩人にその態度はないんじゃないんですか?!」
浅田さんは、涙目になりながら脛をさすっている。相当効いたようだ。
「だから、悪かったって…
今はあんまりお客さんとゴタゴタ起こしたくないんだよ。」
いや、私も客だけど…と心の中でつっこむ。
「もうちょっとなんだ。」
ふと浅田さんが見せた真面目な表情に、なぜだか目が離せなかった。
「もうすぐここで働きはじめて1年になる。
マスターがさ、1年続いたらコーヒーの淹れ方指導してくれるって…」
なんだ…
この人も夢に向かって努力してる人だったんだ…。
確かにマスターって仕事には厳しい人だから…
ちょっと仲間意識がうまれる。
なんだか、今怒ってる事なんて
どうでも良くなってきた気がする…。