夢追う私たち
そんな沈黙を最初に破ってくれたのは
浅田さんだった。
「おい。なんだあの勝手なガキは。」
「ガキって…3個下ですよ。…元カレです。地元で働いてた時の。あの、ありがとうございました。うまいこと言ってくれて…あと、みっともないところ見せてすみません。」
「あぁ…まぁ、アイツは交わしてる感じだったけどな。
つか、お前が言ってた…強いだの守るだの…あれは、なんなわけ?」
「…あれは…」
「いや、言いたくないなら聞かないけど…。」
言いたくないわけじゃない…
けど、浅田さんに聞かせなきゃいけないのが、ちょっと嫌…
でもなんとも言えない、ぐちゃぐちゃな心をどうにかしたくて、重い口を開いた。
「…私、浮気されたんです。レストラン勤務とホテルマン…向こうは不規則だから、すれ違いが多くて。
私は私なりに、向こうが帰ってこなくても家に行ってご飯作りおいたりとか、夜中に急に会えないかって言われた時も、無理してでも行ってました。
そんな中、早上がりできる日ができて…確か英太も休みだったと思って、家に行ったんです。
そしたら、同じホテル勤務の後輩と寝てたんです、あいつ。」
「そりゃぁ、あの時は心が折れました…さすがに。
忙しくても疲れてても、英太の為にできることやってきたつもりですから。ただの家政婦かよって…。
で、『菜耶は俺より仕事じゃん?菜耶みたいに強い子は一人でも平気でしょ?あの子は、俺が守ってやらなきゃダメだから。』って。
今は、わかってるって言ってたけど、そんなのもう信用できるわけない…。今更…」