夢追う私たち
確かに
美咲さんが居たのは、入り口から入って右側の奥まった席。
浅田さん達は入り口から見て、一番左奥の厨房前だ。
気づかなくても無理はない。
「どうかしたんですか?」
「えっと…」
さっきまでの威勢はどこへやら、美咲さんはしどろもどろになっていた。
「あ、髪の毛?…ちょっと失礼します。」
何を思ったのか、浅田さんはポトフから髪を取り白いナプキンの上にのせる。
「…美咲さんて素敵な髪色してますよね。茶に少しピンクが入ってて。」
「え?そうかなぁ~、あたしも気に入ってるの~。」
「いや、そうじゃなくて。これ。」
「え?」
ナプキンを美咲さんにつきだす。
その瞬間美咲さんの顔がサーッと青くなった。
「どーみても、《ピンクががった茶》ですよね?倉持って地毛?」
「…はい。生まれつき茶色っぽいです。」
「って事です。美咲さん。」
「…やっ、やだぁ~。あたしのが入っちゃったのね?」
「今は、カフェ店員とお客じゃありません。いい機会なので、一人の人間として言わせてもらいます。」
驚いた顔で美咲さんが浅田さんを見つめる。
それもそのはず。
美咲さんがいつも見てる浅田さんは
営業スマイル全開の浅田さんであって
今目の前のにいる
私にとってのいつも通りの浅田さんではない。