夢追う私たち
「その夢を悠貴に押し付けすぎていた。
嫁にも娘にも怒られましたよ。
カフェで働きたいなんて…安定していないじゃないか?安定した職についていたのに、わざわざそんな道に行くなんて、僕は許せなかった…と言うか、不安でしかたがなかった…。
あいつがやっていけるのか、いい年して何を言ってるんだと…つい手がでてしまった…」

その時の事を思い出したのか
自分の手をぎゅっと握り締めた。

「さっきも、生き生きしてる悠貴を見て、嬉しい気持ちになりました。ですが、自分の店を構えるなんて…まだ数年先。生き残るのだって厳しい世界だ。そう思うとね…ついついあんなことを言ってしまって…素直になれない頑固ジジイで、しょうもないね…。」


ただの子供を心配する親。


自分の間違いに気づけたけど
なかなか素直になれない。


「浅田さん、最近やっとコーヒー淹れさせてもらえるようになったんです。仕事終わってからも遅くまで練習もしてます。マスターにも良い腕してるって言ってもらってます。それに、終わってからだって家まで走って帰ってるんですよ。」

走って帰ってるのには、さすがに驚いたようだ。

でもそれだけじゃない…
浅田さんがどんなに頑張ってるか知ってほしい。


「もちろん…だからと言ってこの先成功するかなんてわかりません。何が起こるかもわかりません。でも、それって何でもそうだと思うんです。」

私自身もそうだ。

「だから、見守っていてほしいんです。あの頃した後悔があるなら、尚更。親が子供を心配するのは当然です。でも、本当に困ったときに手をかしてあげる、それでいいんじゃないでしょうか。」

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