覚醒者3号
場所を変えたいという女性を、俺は近くの公園に案内した。

今では遊ぶ子供すらいない、古びた公園だ。

…公園に辿り着くまでその女性は脇目もふらず、言葉も一切発しなかった。

その動きはどこか機械的で、無機質な印象を抱かせる。

…公園に到着すると。

「ここに座って」

彼女は俺を一番近くのベンチに座らせた。

隣が空いてるので勧めるが。

「君に予防接種をした女」

女性は俺の勧めを無視して、立ったまま話を始めた。

「『機関』の者よ」

「機関?」

俺はオウム返しに言う。

どこの機関の話をしているんだ?

質問する暇もなく。

「機関は今回のように、予防接種、病院の点滴、献血などを装って、一般市民に開発した薬品を投与している」




女性はサラリと、とんでもない話をし始めた。
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