覚醒者3号
お、おいおい…。

俺は苦笑いを浮かべる。

ここまで来ると、もう大風呂敷過ぎて笑いが出てくる。

スッと立ち上がり。

「悪いけど、嘘つくなら規模大きすぎない方がいいよ?そんなに大袈裟な話になると、かえって真実味がなくなる…人体実験あたりまでは信用してたんだけどねぇ…」

俺は女性に背を向けた。

危うく鵜呑みにするところだった。

危ない危ない。

鞄片手に歩き始めた俺は。

「!」

突然、足をとられるような感覚に歩を止めてしまった。

…見れば、履いているスニーカー…その右と左の靴紐が結び付けられている。

「!?」

何でだ?

さっきまでこんな事にはなっていなかった。

何で…。

そう考えて。

「……」

俺は女性の方をゆっくりと振り返る。

「……」

女性は先程の位置に立ったまま、一歩も動いていない。

動いていないが。

「信じてもらえた?超能力は現実にあるわ」

彼女はさっきと同じ真面目な表情のまま口にした。

「機関は全国いたるところで人体実験を実施している…そしてその結果、超能力に覚醒した者は、私を含めて現在二人…もし君も覚醒すれば、『覚醒者3号』という事になる」

「……」

信じられない。

超能力…俺が覚醒者3号?

さっきとは別の意味で笑い出しそうになる。

こんな冗談みたいな話を真面目な顔してされるなんて。

だが。

…誰にも触れられる事のなかった靴紐は、確かに固く結ばれている。

この紐が結ばれている以上、笑い事では済まされそうになかった。

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