覚醒者3号
半ば強引に俺の手を引く女性。

その時。

「その手を放しなさい、1号」

冬の空気のような澄んだ声が公園に響いた。

まず俺が、次に女性がその声に振り向く。

…公園の入り口に、ポニーテールの若い女が立っていた。

学校で俺に予防接種をした女。

確か名前は、黛さん…。

「放す訳にはいかない」

女性はその視線を黛さんに向ける。

俺に向けた視線と同様、感情を感じさせない無機質なもの。

だが今はそこに、僅かばかりの色がこもる。

これは…『殺意』というものではないか。

「いえ、放してもらうわ。小山田君を貴女に渡す訳にはいかないの」

黛さんはその愛らしい顔を険しく強張らせて言った。

…女性と黛さん、しばしの沈黙と睨み合いの後。

「そう」

女性が一言呟いた。

直後。

「!?」

俺がさっきまで座っていた木製のベンチ。

それがひとりでに、フワリと浮き上がった…!

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