覚醒者3号
無言のまま、私はバイクの男に歩み寄る。

「そのバイクをもらう。降りろ」

「は?」

茶髪をヘルメットから僅かに覗かせて、二十歳くらいのその男は見るからに不機嫌そうな視線を私に向けた。

「バイクを降りろと言っている」

「何でてめえにバイクやんなきゃなんねえんだバカアマ!」

物分かりの悪い男だ。

任務遂行の妨げになる。

私は男の顔を見ながら、集中力を高める。

途端に。

「!?」

ヘルメットをかぶったままの男の頭が、180度回転した。

体は正面を向いたまま、顔だけが後ろを見ていた。

私の念動力で彼の頭をねじったのだ。

頸椎がへし折れている。

男は目を見開いたまましばらく痙攣した後、ヘルメット越しでもわかるような苦悶の形相で息絶えていた。

私は沈黙した男をバイクから引きずり下ろし、代わりに自分がバイクのシートにまたがった。
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