覚醒者3号
それにしても、と。

黛さんは周囲の気配を敏感に感じ取る。

「1号…あのまま私達が死んだと思っていてくれればいいんだけど…」

…確かに。

もし死んだと勘違いしてくれれば、俺達はもうあの女に追われる事はないだろう。

しかし、あの女が死体も確認せずに追跡を諦めるような奴ではない事は、この数時間で嫌というほどわかった。

あいつは確信もなしに諦めたりはしない。

自分の目で見たものしか信用しないタイプだ。

殺すか、捕まえるか。

どちらかしかない。

そうでない限り、永遠に俺達を追い続けてくるだろう。

「…黛さん…行こう」

俺は体を起こす。

「え…無理よ、もう少し休んだ方が…」

心配そうに黛さんが俺を見る。

…気遣いは有り難いけど、同じ場所に長く留まるのは多分危険だ。

1号はきっともう俺達の捜索を開始している。

信じられない事の連続で、俺は追われる者としての立場をだんだんと認識し始めていた。

いつまでも黛さんに面倒はかけられない。

そろそろ自分の判断で行動し、1号から逃げ延びる手段を考え出さなければならない。

頭痛はさっきよりは治まった。

「行こう…いつまでもここにはいられない」

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